เข้าสู่ระบบソウ一行が向かう、やや前に遡る。
「ヤン!バガールの群れだ!今日はいい日になりそうだな!こっちはもう腹が減って死にそうだ。さっさと狩猟しようぜ!」
そう叫ぶのは、狩人らしい見た目のラルクだ。
そしてラルクの前方に見えるのは、鹿のような姿で、本来の鹿より一回り大きい獣――バガール。角は捩れ、今にも岩を砕きそうな見た目をしている。そのバガールが群れを成し、大陸を横断している姿に、二人は感動していた。「しっかし、こんだけいりゃあ、一月以上は持つな。ラルクよ、他のメンツはどうした?」
ヤンもまた似たような格好をしており、頬には火傷の跡が残っている。喋るたびにその痕が生々しく痛々しく見えるが、本人としてはどうってことないのだろう。
「え?どうしたって、知らねえよ。そういやヤン、あの親子は後で来るのが毎度のことだからいいとして、村から駆り出されたのは俺らだけじゃないはずだよな?」
本来なら十数名が、ここで落ち合う予定だった。
定刻――陽が直上に昇り、二対の巨木が交差するこの場所で、バガールを狩る約束だったのだ。「ああ、間違いなくそうだ。仕方ねえ、俺らだけで先に頂いちまうか」
仕方ないと言ってはいるが、ご馳走を目の前にしたハイエナのような表情を、二人は顔を見合わせてニヤつかせる。
「ラルクよ、準備はできているか?」
「当たり前だ、ヤンよ」そうして二人は構えた。
バガールの群れに対し、臆することなく眼差しを向け、力を込める。『『――宿れ、土蟹《ツチガニ》よ!!』』
二人の身体の一部が形態変化する。
ラルクの左腕が黒く染まり、異様に大きく膨れ上がったかと思うと裂け、硬質化し、真っ黒な鋏腕へと変わった。
ヤンも同様に、右腕が真っ黒な鋏腕へと変化している。この二人は、以前に土蟹を食し、何度も何度も食べては思考し、また食べては思考する――そうして辿り着いた、努力の賜物だった。
ライバルであり、親友だからこそ互いを高め合えた結果である。 だからこそ、村の食材調達を担う狩人となり、自分たちだけでなく村全体へ意識を向けていた。「ヤン、出遅れるなよ!」
――シュンッ、ツツ、ズバッ、メキメキ、ジャキッ。
ラルクは一気にバガールの群れへ突進し、一体の首を鋏で掴み、そのまま捩じ切った。
バガールは一瞬の出来事に、まだ目を見開いたまま、自分の身体を見上げ、奇声を発している。群れは危険と判断し、円を描くように距離を取った。
「次ぃ~」
ラルクが視線を走らせた時には、バガールの群れは脱兎の如く逃げ出していた。
それは集団的自衛の行動であり、簡単には次を捉えさせない――そう意思表示しているかのようだった。「かあああ、これだから単細胞は困るんだ。お前は一番が偉いと思ってるんだろうが、晩飯一匹を村に持って帰ったところで、盛大な歓迎なんてされねえからな」
ヤンはやれやれと、変化した右腕――鋏腕を額に当て、ため息をついた。
だが、毎度のことと割り切り、すでに策を練っていた。――追い込む。それも、選択の余地を与えないやり方で。
ヤンは事前にバガールの習性を調べていた。
集団移動の際は決まったルートを通り、先頭には群れを率いるボスがいる。 つまり、この集団は規則的に動くはずだった。ラルクの突撃によって群れは一時的にパニックに陥り、そして冷静を取り戻した。
――その瞬間を、ヤンは見逃さなかった。集団に追いつけていないバガールが数匹いる。
本来ならルート通りに誘導し、闇討ちを繰り返す予定だったが、この群れはまだ若く、統率が甘いようだ。ヤンは瞬時に理解し、はぐれた一体の背後へ回り、首元を鋏で捻じ切った。
他のはぐれバガールは、まだ事態を理解できていないのか、草を食べたり、周囲をきょろきょろと見回している。「功を奏したな。ある意味、ラルクのおかげかもな」
一方ラルクは、いまだ群れを追い回し、翻弄されていた。
最初に一体仕留めた成功体験が、後戻りを許さなくしていた。「くそっ! このやり方でいけるはずなんだ!」
「馬鹿か、おめーは」(ゴンッ)
「いてぇ!何すんだよ、ヤン!」
「無駄な体力使うんじゃねえ。帰りまで残しとけ。まーたエネルギー切れで、次の朝、顔洗いながら『なんだこのカニバサミは!?』とかアホ面するの、俺は見たくねえんだよ」 「くっ……それは言うなよ、ヤンよ……。けど、お前この間、寝言でアンナのこと愛してるだの何だの、ほざいてたぞ」 「おまっ! 関係ねぇだろその話は! 鋏の話してんだこっちは!」 「あぁ?おめえがイジってくるから言ってんだろ、あほうが!」二人が言い争っていると、バガールの群れが騒がしくなった。
先ほど逃げた方向から、再びこちらへ向かってくる。 その先から土煙が舞い、その中に二つ紅く光るものが潜んでいた。「なあ、ヤン……あれ」
「ああ、分かってる。あれはヤバい」(何だ、あいつは……。今まで見たことがねえ。
バガールの群れをここまで追い詰めて、しかも土煙に混じって血の匂いが濃い。 あれは……逃げなきゃ、勝てる気がしねえ)「なぁヤン、ちょっと面白そうじゃねぇか?」
そう言って、ラルクは飛び出した。
「バカ! よせっ!!」
ヤンの叫びも虚しく、ラルクは土煙と轟音の中へ吸い込まれていった。
「くそっ……待て、ラルク!」
ヤンも後を追い、血と土煙が舞う中へ踏み込む。
そこに佇んでいたのは、異様な生物だった。足元には、無数のバガールの死体。群れのボスと思しき一回り大きな個体も、息絶えている。
それどころか、潰され、圧殺されたようだった。正面を凝視すると、梟のような顔、虫のような胴体、猿のように毛に覆われた腕。下半身はケンタウロスのようで、胴は馬、前脚は鳥のように鋭く、後脚は象のように太く黒い。
そして――
ケンタウロスの胴から、血の滴る長い臓物が垂れ下がっていた。――クチャ、クチャ。
怪物は器用に腕を使い、臓物を口へ運び、見せつけるように咀嚼している。
さらに目を疑ったのは、その臓物の先端に繋がっていたのが、人の頭だったことだ。(そ、そんな……嘘だろ……おい……。アンナ……嘘だろ……なんで……)
アンナ、そして共に駆り出された狩人たち――
皆がこの怪物に殺されたのだと悟り、二人は立ち尽くすしかなかった。怪物は食事に飽きたのか、梟の頭をくるりと反転させ、顔を傾けて二人を凝視する。
「ラルクよ……お前は逃げろ。あいつは俺が、ぶっ殺す!!」
常に冷静なヤンも、この時ばかりは思考が追いつかなかった。
愛する人を殺され、さらに食われた怒りが、理性を押し流す。それでも友を思い、言葉を残した――
だが次の瞬間、ヤンは本能のまま怪物へと突っ走っていた。ーー咆哮。一撃で獲物を仕留められなかった怒り。獲物が沢山いるのに、一匹も食せない怒り。 |顎虫蛇《アギトスネーク》は、表皮に浮かび上がった血管がみるみる赤くなり、本格的な戦闘態勢に入った。 そして、その長くて大きい体躯をとぐろ状に巻き、まるでエネルギーを蓄えるかのように渦巻いた。次に全身の筋肉によって制御された体躯を、緊張した筋肉の強張りがピークに達したとき、解放―― 体躯は捻転し、先端の顎がまるで掘削機のように、いとも簡単に地面を削りながら掘り進んだ。「なんだ!?こいつの動きは!!」 予想外の動きに戸惑う一同。だが、ゲンによる指揮により、村人達は一瞬たりとも気を緩めてはいない。「お前ら、地中に潜ったやつに注意しろ!飛べるやつはすぐに退避するんだ!!」 そして、ゲンの指揮により飛べる者は遠くの木に逃げ、窺うようにしてゲン達を見つめた。「親父、俺はやれるぜ!」 フライバエの形態変化を、ソウは完全にものにしていた。そして、ソウはまた新たな試みをしようと企んでいたのだ。「ソウ、無理はすんなよ!」 ゲンの右腕は装甲のような見た目へと変化しており、その刀身は橙色を帯び、まるで琥珀のように年月を蓄積した異様さを漂わせている。「ゲンさんはガードして、俺がヤツに一発お見舞いする!その隙にみんな、胴体に切り付けるんだ!」(一同はうなづいた。) |顎虫蛇《アギトスネーク》は、金属音のような音と共に地表へと「ドガン」と音を立てて現れた。村人を完全に襲おうとしていた。 しかしゲンは音を頼りに、フライバエの形態変化を一瞬だけ発動して羽を出現させ加速。空気抵抗を減らすため即座に解除し、右腕の大剣で受け流すようにガードした。(ギャリリリリリィッッ) 鈍い金属音と共に回転速度が落ちていく。 回転が止まった、その瞬間――ラルクは顎虫蛇《アギトスネーク》のこめかみに照準を合わせた。黒い鋏に、ロケットのように貝が出現する。「ぶっ飛ばすぜ!」 ラルクが呟いた刹那、空気が波打つ。 体勢を変えようとした顎虫蛇《アギトスネーク》へ、鋏を閉じ、槍のように突き刺した。「キシャーッッ」 顎虫蛇《アギトスネーク》は頭をのたうち回す。 好機だった。サブは銛のような腕を尻尾に突き刺す。「やったッス、てっええうお゙お゙」 顎虫蛇《アギトスネーク》は暴れ回り、サブもつられて
――ゲンは高らかに笑っていた。「大丈夫なんじゃろうな、ゲンよ……。」 ヤンガは腕を組み、深い皺を刻んだ顔でそう言った。 これまでに失ったものが多すぎたヤンガは、村長であるその責任を自分が背負っていると感じていた。「爺さん、大丈夫だ。今回の狩は、なにも怪物を狩ろうってわけじゃあねえ。でかい魚さ。」「お主のう……。まあ、お主が出来ると言うなら信じておるが、一人でも欠けたら――。」 ヤンガはゲンを睨みつける。「――わしは、お前を許さんぞ。」「わかってる。」 ゲンは真っ直ぐに目を返した。「爺さん、それは俺の命を賭けて……いや、必ず全員守る。」 その言葉に、ヤンガは小さく鼻を鳴らしただけで、それ以上は何も言わなかった。 ◇ 集まった村人たちは、北東の水源地近くで野営をしていた――。 前回のバガール討伐に出た狩猟班とは違い、今回は経験値にばらつきのある構成だった。 だが、人数が少ない分、動きは軽い。 ゲンは先頭に立ち、地形を見極めながら進軍する。「大型の痕跡あり。右に回れ。」「足元、落ち葉の下は湿地だ。踏み込むな。」 その的確な指示に、村人たちは無駄な混乱もなく従っていた。「しっかし、ゲンの旦那は指揮が上手いっすね。」 サブが感心したように言う。「途中で装岩虫の群れが出た時は、もう終わったかと思ったっす。でも一瞬で陣形を組み直して……最後は旦那が形態変化で一刀両断。あんな硬いの、ゲンさんしか切れませんっす。」「褒めても何も出ねえぞ。」 ゲンは肩をすくめた。 その後、一行は水源地へと辿り着く。 幅広の川。流れは緩やかだが、ところどころ水面が不自然に揺れている。「……いるな。」 ゲンが低く言った。「シクティスだ。群れで来る。」 作戦の確認が行われる。 両岸に村人たちが伏せ、ツルで織り込んだ網や、形態変化で作った銛状の武器を構える。 そして――。「ソウ!!」「……わかってるよ。」 ソウは一歩前に出た。身体を変化させるよう、頭の中で強く思考する。(宿れ、フライバエ……。) 次の瞬間、体が軽くなり、背中から羽音が広がる。 フライバエへの形態変化。 ソウは低空を飛び、川の中央へ向かう。 あえて高度を落とし、片脚を水面へと浸した。(来い……。) 水中に影が走る。 次の瞬間、水面が爆
ゲンとソウは、広間へ向かう途中で走ったせいか、肩で息をしていた。 「親父ぃ、俺は負けねえ。俺が一番に広場に着くからな。」 「馬鹿野郎。この俺の俊足に敵うはずがねえだろ。」 二人は、先ほどまで揉めていたことなどすっかり忘れ、なぜか徒競走でどちらが先に着くかを競い合っている。 (なーにしてんだ、このバカ親子は) 「あんたら、広場に行くんだろ。そっちは外に出る方向じゃねえか。待ってる人がいるんだ、頼むから茶番はやめてくれよ。」 ラルクは呆れた顔で、違うと示すように進行方向を指差した。 「「あ? 誰が茶番だって?」」 (あ、ダメだ。こいつら) 「ほーれ、落ち着かんか、お主ら。広間まで行く必要はないぞ。ここに連れてきた。狩猟班志望の者たちじゃ。」 ((よろしくお願いします!)) 数名の村人が三人に向かって挨拶をする。その中に、ソウと同じくらいの年齢の子が一人いた。 茶色のストレートヘアを黒いゴムのようなもので後ろに束ね、ポニーテールにしている。紋様の入ったワンピース姿の少女だ。 少女は一歩踏み出して―― 「村の外れに住んでる親子がいるって噂で聞いたけど……私と背、同じくらいか、ちょっと小さいくらいじゃない?」 炉端の石を見るような目で、少女はソウを値踏みするように見て、馬鹿にした口調で言った。 「あ? 誰だよ、お前。てか、俺の方が背ぇ高ぇし――!」 言い返そうとした瞬間、ソウは無意識に爪先立ちになっていた。 「え、ダッサ。爪先立ちって、子供なんだね〜。」 少女は容赦なく追い打ちをかける。 「こ、こ、こいつ……クソムカつくんだが!!」 ソウは怒りでワナワナと震える。しかし、相手がか弱そうな少女だということもあり、理性でどうにか踏みとどまっていた。 「まあまあ、その辺にしとけって。オレッチはサブだ。で、お前に茶々入れたこの子はレイだ。よろしくな。」 レイは「フンっ。」と鼻を鳴らし、ぷいとその場から外れた。ソウはまだ怒りが収まらず、小刻みに震えている。 サブはやれやれといった様子で、ボロボロの衣服を揺らした。尖ったモヒカン頭が特徴的で、日差しがそれを照らしている。 「おう、サブ。久しぶりだな。相変わらず尖ってんな、その頭。調子はどうだ?」 「あ、ゲンの旦那。久しぶりっすね。もちろ
ーー魂鎮めの火台の炎は、朝日と共に消えていた。燃え終わった炭から、微かに煙が立ち上っている。 ソウとゲンは、空いている家に寝泊まりしていた。二人は、昨日の荘厳な景色に心を奪われ、村人たちと語らい疲れ果て、戻ってきた矢先に泥のように眠ってしまったのだ。 ゲンは椅子に座ったまま突っ伏して眠っており、なぜか右手には酒瓶のようなものを握っている。ソウは、ゲンの椅子の近くの床で仰向けに寝ており、トレードマークのターバンは首に引っ掛けたまま、よだれを垂らしていた。「ッッグガっ。」(ッチ、頭がいてぇ。どうやら飲み過ぎたみたいだな。昨晩は嫌なことを忘れるために、皆で飲んだからな。) ゲンは、昨晩飲み明かした記憶を思い出していた。そして、凝り固まった身体をほぐそうと伸びをした、その瞬間―― ーガタッ。(ゴンッッ!)「いっでっっええええ!」 ゲンが伸びをした拍子に動いた椅子が、ソウの鼻先にクリーンヒットしたのだった。ソウは鼻を押さえ、床の上で悶絶している。「あ? なんだ、お前、そんなとこにいたのか。ちゃんとベッドで寝ろ。まったく、誰が躾をしてるんだか。」 ゲンは、やれやれといった様子で呆れている。「くそ、毎回毎回痛えよ! 躾って……あんただよ! あと、親父に言われたかねえし! 自分だって、そんな突っ伏した体勢で寝てるくせによォ!」 子が子なら親も親である。二人は顔を突き合わせ、睨めっこを始めた。 ーーすると、こんこん、とドアをノックする音が響いた。「あー? 誰だ?」「ゲンさん、ラルクです。助けてください。今、食糧庫でちょっと……。」(ガチャッ。)「何だよ、ラルク。」 機嫌が悪そうに、ゲンは白銀の髪をぽりぽりと掻きながらラルクに問う。「それが、食糧庫がもう尽きかけているんです。このままでは、村の皆が餓死してしまいます。あの作戦のことも理解していますが、こちらもどうにかしてもらわないと……。」
昨日から重苦しい空気はさほど変わっていない。それでも村人たちは、慰霊祭の準備に追われていた――。 木を幾重にも組み上げ、長く火が保たれるよう考え抜かれた組み方で、台は徐々に高くなっていく。 弱肉強食――自然の摂理のもとでは、狩る側も狩られる側も、等しく代償を支払う。だが、今回の代償はあまりにも大きかった。 村人たちは「死人に口なし」どころか、まるで生者にも口がないかのように、物静かに作業を進めていた。「……静かだな。」 ラルクが、ぽつりとソウに言った。「それくらいで、ちょうどいいんじゃねえの。昨日みたいに、誰かがドヤされるよりはさ。」 ソウは肩をすくめる。「ソウ、お前、まだ根に持ってるのか。昨日のこと。」「べっつに。……でも、本当のことを言っただけだし。辛いのは、みんな同じだろ。」「まあ、そうだが……あ、そうだ。ヤンの好きだった物、ヤンガの爺さんの所に取りに行こうぜ。」「お、それいいな。ちょうど暇だったし。」 二人は村長宅へ向かった。 ――すると、外からではあったが、扉越しにヤンガとゲンの会話が聞こえてきた。「爺さん、怪物が出たんだ。しかも、俺たちが知ってる類じゃない。策を固める必要がある。今までは自由に動いてきたが、今は有事だ。いち民草として言わせてもらう。この村の防御網は、あまりにも脆い。」「……それは、そうじゃのう。じゃが、周辺の索敵も疎かにはできん。怪物の動きが分からんし、食糧の問題もあるからのう。」 二人は山積する課題に、頭を悩ませていた。 ――キイ、バタン。「お、取り込み中だったか。……おっ、地図じゃん。」 ソウは遠慮なく中へ入り、地図に手を置いた。「ここが村。狩りに出た進路は西。森林を抜けて高原、中央に二対の巨木。その先、北西へ進むと荒地で、さらに行けば河。向こう側は山陵――こんな感じか。」 指でなぞりながら、状況を整理していく。「なるほどな……。奴と遭遇したのは、高原と荒地の境目、河に近い場所ってわけか。」 ラルクは口早に言い、ゲンは頷いた。「防御じゃなく、行動範囲を制限する。……つまり、これだ。」 彼は地図の河を指差す。「河に毒でも流す気なの?」 ソウが眉をひそめる。「違う。そんなことをすれば、下流の生態系が死ぬ。追う必要もない。奴の行ける場所を減らすんだ。河を使って、隔てる。」「じゃが、
――村人たちは、ゲンたちによって大広間の物見台の近くに集められていた。 およそ三百名ほどの村人が物見台を正面にして立ち、その台の上にはゲン、ラルク、ソウ、そして村長であるヤンガの四人が並んでいる。(ザワザワ……ザワザワ……)「一体なんなの? こんな大勢集めて。村長を決めた日の宣誓日以来じゃない? こんなことするなんて。」「なんだってんだ。日も暮れてしまう時間帯だぞ。」「わたしも夕飯の支度をしてたら、あの少年が『おばさん、今から大事な発表があるから物見台に来て。絶対だよ!』って、真剣な眼差しで言うから来てみたのよ。そしたら村のみんながいて、びっくりしたわ。」 村人たちは一体何事かと、不安を口々にしており、事態を飲み込めていない様子の者ばかりだった。 ゲンは、ぱんぱん、と手を叩き、視線を集めた。「みんな、集まってくれてありがとう。今ここに呼んだ理由は、全員に関係することだ。そして、悲しむ者も出るだろう。単刀直入に言う。我ら食糧調達に出た狩猟班は、奇妙な怪物と遭遇した。三班とも全滅状態で、生き残ったのは、おそらく我々三人だけだ。」(!!?) 村人たちは理解が追いつかない様子だった。思考を止める者、驚きを隠せない者、それぞれの顔に疑問と混乱が浮かんでいる。「ゲンの言っておることは本当じゃ。わしの孫、ヤンも、そやつに殺されたのじゃ。」(ザワッ!!) 悲鳴や「信じられない」といった声が、一斉に四人へと向けられる。それも無理はないと、彼ら自身が理解していた。だが、これしか方法はなかった。「私の息子、ジェスは? いないの? ねえ、全滅ってどういうことなの? 捜索したら、いるかもしれないじゃない! 時期尚早すぎるわ!」 母親としての叫びは、あまりにももっともだった。 だが、ゲンが「三班とも全滅」と言った理由がある。 ラルクは知っていた。班長たちは、すでに死んでいる。 ヤンの最愛の人アンナは班を率いており、残る二つの班の班長の頭も、怪物の胴体に乗せられているのを、ラルクはこの目で見ていた。 つまり、あの場にいた者が生き残る可能性は、極めて低い。仮に生き延びていたとしても、食い繋ぐ物資は足りない。集合場所であり緊急避難先でもある二対の巨木に、生存者は現れなかった。帰路でも、誰一人として遭遇していない。 ゲンやラルク、ソウは、道中で仲間の痕跡を探